Copilot Studioを会社で使う前に⑦|人事・情シス・経理で1体ずつ作って試した

CopilotStudio
人事・情シス・経理の3つの業務で、エージェントを1体ずつ作って試しました。
就業規程に答えるもの、問い合わせを記録するもの、経費の科目を判断するもの、の3つです。
同じ作り方でも、うまくいく場合とそうでない場合がはっきり分かれました。
その分かれ目を、実際の画面で並べて確認します。

①〜⑥は、環境・公開・共有・費用・データ・更新という土台の話でした。
ここからは、その上に載せる中身の話です。

研修で「Copilot Studio で何ができるか」を説明しても、抽象的なままでは伝わりません。相手の部署の業務で動かして見せるのがいちばん早いので、3つ作りました。

この記事の道のり
① 3本の位置づけ → ② 人事:答える → ③ 情シス:記録する → ④ 経理:判断して人につなぐ(承認まで) → ⑤ うまく動かすための4点セット

 

いまここ

13本の位置づけ
2人事:答える
3情シス:記録する
4経理:人につなぐ
54点セット

① 3本の位置づけ

この節ですること

3体それぞれの難易度と、必要になるものを整理します。
終わるとこうなる

どれから作ればよいかが決まります。

作った3体は、できることが段階的に上がります。
同時に、必要なものと費用も上がります。

▲ 答える → 記録する → 判断して人につなぐ。段階が上がるほど必要なものが増える
  • 人事(就業規程ヘルプ):規程を読んで答える。
    ナレッジだけで作れる
  • 情シス(ヘルプデスク):FAQで答え、答えられない質問を記録する。
    フローが1本要る
  • 経理(経費ナビ):金額から科目を判断し、承認ルートを案内する

検証にはすべて架空の会社「サンプル商事」の資料を使いました。
各資料には、意図的に書いていない項目を混ぜてあります。
答えられないときの振る舞いを見るためです。

 

3本とも作り方は同じで、難しさと必要なものが少しずつ上がります。
どれから作るか迷ったら、この順番が分かりやすいと思います。
いまここ

1✓ 3本の位置づけ
2人事:答える
3情シス:記録する
4経理:人につなぐ
54点セット

② 人事:就業規程に答える

この節ですること

就業規程を読ませて答えさせます。
最初の失敗と、直したあとを見比べます。
終わるとこうなる

資料を入れるだけでは使われない、という理由が分かります。

最初に作ったのが人事向けです。
架空の就業規程をナレッジに入れ、社員からの質問に答えさせます。

ところが最初の質問で、想定と違う答えが返りました。

実際の画面
▲ 「社内の就業規程データベースから取得できませんでした」と言いながら、労働基準法の一般的な日数の表を提示している

参照されたソースを見ると、社会保険労務士事務所のページと厚生労働省のサイトでした。アップロードした規程ではなく、世間一般の情報で答えています。

企業でいちばん困る状態答えとしては、もっともらしく見えます。
しかし社内の規程は、法定の日数より多く付与していることがあります。
一般論で答えられると、正しいかどうかを読んだ人が判断できません。

原因は1つではありませんでした。
ナレッジの説明が短かったこと、指示文で根拠を縛っていなかったこと、Web検索が有効だったことが重なっています。
3つを直して、同じ質問をやり直しました。

実際の画面
▲ 直したあと。参照は規程のファイルのみになり、第4条の表を根拠に回答している
同じファイルが入っていたのに、最初は読まれていませんでした。
資料は入れるだけでは使われません。
説明文と指示文で「これを使え」と決めて、はじめて根拠になります。

「入社3年目」という聞き方に対して、11日または12日と時期で場合分けしている点も見どころです。
規程は勤続年数で日数が変わるので、断定を避けています。

実際の画面
▲ 急な体調不良での申請。原則の3営業日前と、当日の例外手順を読み分けている

この回答は、規程の第5条にある「やむを得ない事由により事前申請ができない場合」を、質問の状況に当てはめた回答です。
原則と例外の両方を示しています。

実際の画面
▲ 規程に書いていない項目。「含まれていません」と答え、人事部へ案内している

副業については、規程の末尾に「本抜粋には含まれていない」と書いてあります。
その記述を根拠にして、答えられないことを伝えました。

 

最初は資料を入れたのに一般論で答えてしまいました。
資料は入れるだけでなく、指示文で「これを使って」と縛って初めて根拠になりました。
いまここ

1✓ 3本の位置づけ
2✓ 人事:答える
3情シス:記録する
4経理:人につなぐ
54点セット

③ 情シス:問い合わせを記録する

この節ですること

社内FAQで答えさせ、答えられなかった質問をフローで記録させます。
終わるとこうなる

ツールが動く条件が分かります。

2体目は情報システム部のヘルプデスクです。
人事で分かったことを最初からすべて入れて作りました。

実際の画面
▲ 1回目のテストから社内FAQのみを根拠に回答。手順を番号つきで3つ、連絡先も添えている

人事のような外部サイトへの逸脱は、一度も起きませんでした。
作り方をそろえれば再現できる、ということです。

実際の画面
▲ FAQの条件分岐をそのまま読み取り、旧端末の有無で場合を分けている

FAQには2文で書いてあるだけですが、見出しを分けて整理し、最後に「旧端末の状況はいかがでしょうか」と確認を返しています。

実際の画面
▲ FAQに無い質問。対象外である旨の注記を引用して断り、ヘルプデスクへ案内している

ここまでは人事と同じ「答えるだけ」です。
情シスでは、もう一段進めて答えられなかった質問を記録させます。
フローを1本作り、エージェントの道具として接続しました。

用語エージェント フロー:エージェントが呼び出せる処理。
今回は「問い合わせ内容と種類を受け取り、担当者へ通知して、結果を返す」だけの短いもの。

接続の作成では、設定内容とは別の理由で止まる場面が2つありました。
あわせて残しておきます。

実際の画面
▲ 接続の作成に失敗。原因は権限ではなく、ブラウザのポップアップブロックだった
実際の画面
▲ 投稿先にメールアドレスを直接入れるとエラー。先に種別を選ぶと受信者の欄が現れる

※ エラー文が原因を指している

2枚目のエラーは MissingOrInvalidTeamsFlowbotRecipientType でした。
受信者の種類が指定されていない、という意味です。
投稿先は「種別を選ぶ」と「相手を選ぶ」の2段構えになっていました。

フローを公開して接続したあと、テストしてもツールが動きませんでした。

実際の画面
▲ 動いたのはナレッジ検索だけ。「問い合わせを記録する」は実行されていない

指示文を見直すと、「ヘルプデスクへ引き継ぐよう案内します」とだけ書いてありました。ツールを使えとは書いていません。
次のように書き換えました。

・FAQに該当がない場合は「FAQには記載がありません」と正直に伝えたうえで、必ず「問い合わせを記録する」ツールを実行して内容を記録し、ヘルプデスクへ引き継ぐと案内します。
実際の画面
▲ 書き換えたあと。ナレッジ検索に続いてフローが実行され、種類は「アカウント」と自動で判定されている
ナレッジは説明文で採用が決まり、ツールは指示文の名指しで呼ばれます。
どちらも「置いておけば使われる」ものではありません。
実際の画面
▲ 担当者に届いた通知。質問の文章がそのままではなく、報告文に整えられている

通知の本文は「〜について問い合わせがあった。
社内FAQに該当記載なし。」と要約されていました。
トリガーの入力に説明を書いておいたので、何を入れるかをエージェントが判断できています。

 

答えるだけでなく、答えられなかった質問を記録させると、運用がぐっと実務的になります。
ここはフローを1本足すだけでした。
いまここ

1✓ 3本の位置づけ
2✓ 人事:答える
3✓ 情シス:記録する
4経理:人につなぐ
54点セット

④ 経理:金額で判断して、人につなぐ

この節ですること

金額から科目を判断させ、承認を人に回します。
終わるとこうなる

会話から人の承認まで、1本でつながる形が分かります。

3体目は経理です。
経費のルールを読ませて、勘定科目の判断と承認ルートの案内をさせます。

ここでも1回目は失敗しました。
ただし原因は人事のときと違います。

実際の画面
▲ 参照が外部の税務系サイトになり、「区分基準に関する記載を確認できませんでした」と回答している
実際の画面
▲ 原因はこちら。ナレッジの状態が「処理中」で、索引の作成が終わっていなかった
準備完了になるまでテストしないアップロード直後は、資料がまだ検索できる状態になっていません。
この状態で質問すると、Web検索を無効にしていても外の情報で答えます。
状態が「準備完了」になってから試します。
数分から10分ほどかかります。

索引が終わってから、同じ質問をやり直しました。

実際の画面
▲ 20,000円 ÷ 4人 = 1人5,000円。「5,000円以下」の条件を満たすので会議費、と計算を示して回答

境目のちょうど5,000円を「以下」と正しく扱っています。
さらに、聞いていない申請時の記載事項と承認ルートまで 足しています。
ルールの別の章を読んで、必要だと判断したためです。

次に、条件を1つだけ変えて聞きました。

実際の画面
▲ 40,000円 ÷ 5人 = 1人8,000円。5,000円を超えるので交際費に変わり、必要な記載も増えている
同じ「取引先との食事」でも、金額を変えると答えが変わりました。
暗記した知識ではなく、ルールを読んで計算しています。
さらに「交際費で1件5万円を超える場合は経理部長の承認も必要。
今回は4万円のため不要」と、該当しない条件まで先回りして打ち消していました。
実際の画面
▲ ルールに無い項目は「本ルールには含まれていません」と答え、経理部へ案内している

経理は3本のなかで、いちばん判断が要る業務です。
それでも承認そのものは人がやると指示文で決めてあるので、案内で止まります。

ここまでは案内だけです。
実際に申請を回して、人が承認するところまで作りました。

用語承認(Approvals):フローの途中で人の判断を待つ仕組み。
依頼がメールやTeamsに届き、承認か拒否が押されるまでフローは待機したままになる。
実際の画面
▲ フローの構成。入力は金額(数値)・内容・科目。金額が5万円以上かで分岐する
なぜそうするか金額は数値の型にする。
テキストのままだと大小を比べられず、分岐が作れない。
入力の型は、あとの分岐でできることを決めてしまう。

作ったフローをエージェントの道具として接続し、会話から申請してみました。

実際の画面
▲ 申請を頼むと、エージェントが足りない情報(目的・参加者)を先に聞き返した

必要な情報がそろっていないと判断して、確認を挟んでいます。
指示文で「申請の可否は判断しない」と決めてあるので、勝手に埋めることはしません。

実際の画面
▲ 情報を答えるとフローが実行された。金額は 60000 の数値として渡っている

会話に書いた「6万円」が、フローの入力では 60000(Number)になっています。
文章から数値を取り出して、型に合わせて渡しています。

実際の画面
▲ 届いた承認依頼。件名・金額・内容が入り、承認と拒否のボタンが付いている

この依頼を翌日に承認してみました。
フローは待機したままだったので、そこから再開します。

実際の画面
▲ 実行履歴。条件は True に進み、「開始して承認を待機」も完了している
人が押すまで1日近く待機して、押した瞬間に続きが動きました。
AIがやったのは、科目の判断と、誰に回すかの振り分けまで。
可否を決めるのは人という形が、そのまま残っています。

※ 差し込みのゴミに注意

届いたメールの詳細欄が「科目: +交際費/金額: +60000」となっています。
ラベルと動的な値の間に、全角の記号が残ったままでした。
動作には影響しませんが、実際に配るものでは消しておく箇所です。

 

金額で答えが変わるところまでは自動で、承認は人が押す、と分けました。
全部AIに任せない線引きが、実務では大事だと思います。
いまここ

1✓ 3本の位置づけ
2✓ 人事:答える
3✓ 情シス:記録する
4✓ 経理:人につなぐ
54点セット

⑤ うまく動かすための4点セット

この節ですること

3本の検証から見えた、うまく動かすための4つを整理します。
終わるとこうなる

次に自分で作るときの手順が決まります。

3体を作って分かったのは、社内資料で答えさせるには4つがそろっている必要がある、ということでした。
人事では3つが欠け、経理では1つが欠けていました。

▲ 4つのうち1つでも欠けると、社内資料があるのに一般論が返ってくる
実際の画面
▲ 1つ目の実例。OneDrive上のファイルを参照で選ぶと SharePoint のソース扱いになり、索引に失敗した

同じファイルでも、ローカルからドラッグ&ドロップで入れると「ファイル」として登録され、問題なく索引されました。
参照でつなぐか、実体を持ち込むかで扱いが変わります。

実際の画面
▲ 正しく入った状態。ファイルは「準備完了」、Web 検索は無効になっている
  • ① ローカルから入れる:参照でつなぐと種類が変わり、索引に失敗することがある
  • ② 説明に質問の言葉を入れる:利用者が使う語を入れると検索が当たる
  • ③ 指示文で根拠を縛る:「ナレッジに登録した資料のみを根拠にする」と書く
  • ④ 準備完了まで待つ:処理中に質問すると、資料を読めずに答えてしまう

 

ここまで完了

1✓ 3本の位置づけ
2✓ 人事:答える
3✓ 情シス:記録する
4✓ 経理:人につなぐ
5✓ 4点セット

⑥ 作業前に押さえておく仕様

  • 資料は入れるだけでは使われない:説明文と指示文で採用を決める
  • ツールは指示文で名指しする:「必ず〇〇ツールを実行して」と書く
  • フローは公開しないと接続できない:未公開のものは道具の一覧に出ない
  • トリガーの入力にも説明を書く:何を入れるかをエージェントが判断できる
  • 入力の型が分岐を決める:金額は数値にしないと大小を比べられない
  • 承認は待機したままになる:人が押すまでフローは止まって待つ
  • 接続の失敗はポップアップブロックのことがある:権限を疑う前にブラウザを見る
  • テストは新しいセッションで:前の会話を引きずったまま比べない

 

ここまで完了

1✓ 3本の位置づけ
2✓ 人事:答える
3✓ 情シス:記録する
4✓ 経理:人につなぐ
5✓ 4点セット

まとめ

  • ① 3本は「答える → 記録する → 判断して人につなぐ」と段階が上がる
  • ② 人事は失敗から直す過程が、そのまま作り方の説明になった
  • ③ 情シスは同じ作り方を最初から適用して、1回で通った
  • ④ 経理は金額を変えると答えが変わり、ルールを読んで計算していることが分かった
  • ⑤ 経理は承認まで作った。
    AIは判断材料まで、可否は人が押す
  • ⑥ どの業務でも、答えられないことは断って人につなぐ形で終わる

3体に共通していたのは、最後は人に渡して終わることでした。
知らないことを知らないと言えて、その先の窓口を案内できる。
業務で使えるかどうかは、ここで決まります。
①〜⑥で土台を整えたうえで、この形を1つ作ってみるのが、社内で始めるときのいちばん軽い入り方になります。

※ 本記事は公開日時点の情報をもとに、筆者が実際に試した内容を整理しました。
登場する会社名・規程・FAQ・経費ルールは、すべて研修デモ用に作成した架空の内容です。
Copilot Studio は更新が続いており、画面や名称、既定値は変わることがあります。

※ 掲載している画面は、操作中に撮りました。
氏名・メールアドレス・環境IDなどは伏せています。
構成や図解の一部は、AI と壁打ちしながら作成しています。

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